不妊治療

いろいろな想いを胸に お二人の実りある時間に そして、つなぐ
治療方法
タイミング療法/人工授精/体外受精
挙児希望に関する相談から一般不妊治療、高度生殖補助医療まで、患者様のニーズに合わせて検査や治療を計画していきます。適切な時期に検査を進めることが、不妊治療を進めていく上でとても大切です。必ずしも、それぞれのステップを踏まなければならないわけではありません。 原因や不妊期間等により、多様な治療選択があります。
診療内容
検査・治療の流れ
まずは不妊検査で、不妊原因を明らかにすることからはじめます。
そして、患者様のご年齢、治療歴、ご希望を考慮して、今後の治療方針を決めていきたいと思います。不妊原因がはっきりしない場合は、できるだけ自然に近い妊娠を目指して、シンプルな治療からステップアップ方式で治療を進めます。
基礎不妊検査
- 基礎体温
- ホルモン検査
- 子宮卵管造影
- 超音波検査
- 精液検査
- 頸管粘液検査
- クラミジア検査
月経3-5日目
その周期に行なう検査・治療の計画を立てる。

タイミング療法
基礎体温や排卵検査薬、超音波検査により卵胞計測を行い排卵日を予測していきます。
排卵の少し前から排卵直後までの妊娠しやすい時期に性交渉を持ちます。卵子の寿命は排卵後24時間で、精子が女性の体内に入ってからの寿命は72時間とされています。
そのため、排卵前に精子が待機して卵子をむかえる方が妊娠率は高まると考えられます。
月経終了~排卵日
卵胞のチェック。
排卵日直前
尿中LHホルモン、頚管粘液のチェック、タイミングの指導。
タイミング指導
医師が排卵日を正確に予測して、夫婦生活を持ってもらうタイミングを指導します。
基礎体温、おりもの、尿中LHホルモン、卵胞の大きさをチェックすることによって排卵日を予測します。
人工授精
ヒューナーテストが不良であった場合や性交障害(腟内射精ができないなど)、精子の子宮内への侵入が妨げられる場合(頸管粘液の分泌が少ない)が適応になります。
ご主人に精液を密度勾配遠心法やSwim up法で洗浄・濃縮された精子浮遊液をカテーテルを用いて子宮内に注入することが一般的です。洗浄することで、未熟な精子や不動精子、奇形の精子、精子の動きを妨げる物質や白血球、脂肪球を取り除くことで、より妊娠率が高くなります。
しかし、人工授精での妊娠率は5~20%とあまり高くありません。人工授精は、あくまで自然妊娠に含まれるということになります。
生殖補助医療(体外受精・顕微授精)
自然妊娠は、卵管で卵子と精子が出会い、受精、受精卵の発育が卵管内で起こります。体外受精は、この卵管でのプロセスをすべて体外で行います。女性の卵巣から卵子を採取し(採卵)、体外で精子と出会わせ(媒精)受精した受精卵を子宮に戻します(胚移植)。まず、卵子を採取する採卵から行いますが、採卵周期は自然周期法・低刺激法・調節卵巣刺激法に分かれます。
採卵周期
調節卵巣刺激法
排卵誘発剤を投与して複数個の卵胞を育て、排卵をコントロールし、効率よく採卵していきます。1回の治療あたりの妊娠率を高める為には、良い卵子を複数個育てることが大切です。排卵誘発剤を使ってなるべく良質の卵を育てます。目標は受精卵3-4個以上です。そうすることで、1回の採卵で妊娠出来る可能性が高くなります。
排卵誘発法は次の通りに分類されます。
1.アンタゴニスト法
2.PPOS法
3.アゴニスト法(Long法、Short法)
4.マイルド法
5.自然周期法
しかし、排卵誘発剤を用いることで卵巣への負担や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがあります。
OHSSとは
排卵誘発剤の使用後に卵巣が過剰反応を起こします。症状は、お腹が張る、尿量が低下する、急激な体重増加、腹痛、息苦しさがあります。卵巣の腫大、腹水、胸水の貯留、全身の脱水を認め、血栓塞栓症や多臓器不全など重症化すると、生命を脅かしかねない疾患です。山口ARTクリニックでは、細心の注意を払って治療して参ります。
OHSS重症化予防について
OHSS予防として、種々の薬剤を用いた予防法が考慮されます。
OHSSの重症化を防ぐために、
①採卵後、レトロゾールやカベルゴリンの服用をすること
②受精卵は全て凍結すること
③卵子の成熟を開始させるHCGをGnRH agonistとすること
を推奨しております。
歴史
1978年にイギリスで体外受精・胚移植法により世界で初めて女児が誕生しました。両側卵管閉塞は、従来の不妊治療では妊娠不可能と考えられておりました。卵管を経由しない妊娠方法として、体外受精が始まりました。この赤ちゃんは健康に発育し成人しております。
日本では1983年に始まり、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)によって生まれた子どもは2021年度は年間69,797人を数え、その年の出生児全体の8.6%、約11.6人に1人が高度不妊治療により誕生したことになります。また、日本でARTにより生まれた子どもは累計で841,106人を数えます。世界中では、約800万人もと言われています。
今では不妊症治療の一つとして、大変重要な位置付けとなっております。
胚移植(新鮮胚移植・凍結融解胚移植)
「胚移植」は、胚(受精卵)を丁寧に子宮内膜においてくることです。胚がストレスなく最適な場所に入ったか、内膜を傷つけていないかが、とても重要なことになります。経腟超音波でモニターしながら、細心の注意を払い移植をしています。
新鮮胚移植
採卵したその周期に、受精卵を子宮に戻します。
採卵後2~3日目(分割胚)もしくは5日目(胚盤胞)に移植します。
凍結胚移植
採卵後の受精卵をいったん凍結して保存し、別の月経周期にその胚を融解して子宮に戻す方法です。「自然排卵周期」と「ホルモン補充周期」という2つの方法があります。
自然排卵周期
排卵前に受診し、排卵日を確認して、排卵して2~3日目(分割胚)、もしくは5日目(胚盤胞)に移植します。
HR(ホルモン)補充周期
ホルモンを薬剤でコントロールする周期です。排卵が起こらず、基本的に卵胞も育ちません。薬剤でコントロールするため、スケジュールを立てやすいメリットがあります。
各種検査
子宮卵管造影検査
卵管の異常は、女性側の中では最も多い不妊原因です。
卵管の異常が進むと卵管狭窄(卵管内の幅が狭くなる)や卵管閉塞(卵管がつまる)が起こります。卵管にダメージを受けると、卵巣から飛び出す卵子をうまくキャッチできなくなったり(pick up障害)、たとえキャッチできても、卵管の中を子宮までうまく卵子を運べなくなる結果、不妊症となります。
精液検査
不妊原因の割合は男女半々です。不妊症の原因検索として、精液検査はとても重要な検査ですので、まずは、精液検査を行いましょう。
子宮鏡検査
着床不全検査
当院で実施している先進医療
タイムラプス
体外受精において、一般的に胚の観察は培養器から胚を取り出し、胚観察を行う方法が一般的です。しかし、胚を培養器から取り出すと、外気と温度変化により胚へのストレスがかかり、悪影響を及ぼす可能性が懸念されます。タイムラプスを用いた培養法は培養器に内蔵されたカメラで15分毎に撮影することにより、培養器から取り出すことなく、胚の動態観察が可能となり、多くの情報を得ることができます。
SEET(シート) 法
着床には胚盤胞を受け入れる子宮側の準備を整える必要があります。子宮側の準備に、受精から胚盤胞までの発育過程につくられる伝達物質が関与していることがわかっています。反復不成功例のなかには、胚由来因子の欠如または減少により子宮内膜の胚受容能の低下を来たし、着床率低下を引き起こすことが考えられております。
これらを改善する方法として、二段階胚移植やSEET法が考案されました。
当院では、多胎妊娠のリスクをなるべく少なくするよう努めており、二段階移植ではなく、SEET法を導入しております。
<方法>
受精卵を5-6日間培養し、一旦凍結します。その際に、胚盤胞まで培養した培養液を受精卵とは別に凍結保存します。この培養液には、受精卵が成長する中で排出される伝達物質が含まれています。
胚盤胞移植に先立ち、その培養液を子宮腔内に注入し、その2-3日後に胚盤胞を移植する方法です。
子宮内フローラ検査
子宮内フローラ検査とは、子宮内膜のごく一部を採取して子宮内に存在する細菌叢(さいきんそう)を調べる検査です。とくに、腟内または子宮内に存在する善玉菌・ラクトバチルス属菌の割合を調べます。
子宮内には、様々な細菌がいることが次世代シークエンス検査で発見されています。なかでもラクトバチルス属の割合が多い人が妊娠しやすいことがわかってきました。主に反復着床不全*の症例に対して、検査を行います。検査の結果を参考にして抗菌剤治療または乳酸菌製剤治療を行います。
*反復着床不全とは、移植を2-3周期して不成功であった場合、または良好胚を累積10個以上移植して不成功であった場合と定義されております。
El-Toukhy T, Taranissi M. Towards better quality research in recurrent implantation failure: standardizing its definition is the first step. Reprod Biomed Online 2006;12:383–5.
子宮内のラクトバチルスの割合が90%以上と90%未満の女性に分けて妊娠率、生児獲得率を調べた論文です。90%以上のグループでは、妊娠率70.6%、生児獲得率58.8%であり、ラクトバチルス90%未満のグループと比較して、良好な成績を得たと報告されました。
不育症
不育症とは
妊娠はするものの流産や死産を繰り返して、生児を得ることができない病態を不育症といいます。既往流産2回の場合は反復流産、3回以上は習慣流産ともいわれています。1人目を正常に分娩した後に、不育症となることもあります。女性の年齢にもよりますが、妊娠の約15%は流産になり、不育症の頻度は約5%と報告されています。なお、妊娠反応のみが陽性で子宮の中に赤ちゃんの袋がみえる前に流産してしまう生化学流産は、現在は不育症の流産回数には含めていません。
不育症の原因
原因としては下記のようなものが考えられていますが、現在のところ確立した検査や治療法は限られています。そのため不育症の検査や治療を行う際は、その意義に関して十分注意して行う必要があります。
- 免疫学的異常
・抗リン脂質抗体症候群 ・同種免疫異常
- 内分泌学的異常
・甲状腺機能異常 ・糖代謝異常 ・プロラクチン分泌異常
- 子宮形態異常
- 両親の染色体異常
不育症検査
- 甲状腺機能検査
FT3、FT4、TSH、抗サイグロブリン抗体、抗TPO抗体
- 凝固検査
保険診療内での検査
抗リン脂質抗体パネル検査(抗カルジオリピン抗体IgG/IgM、抗β2GPI抗体IgG/IgM)、ループスアンチコアグラント(蛇毒法)、プロテインC抗原/活性、プロテインS抗原/活性、血小板、XII因子活性)、抗核抗体
自費診療での検査
ループスアンチコアグラント(リン脂質中和法)、APTT、抗フォスファチジールエタノールアミン抗体IgG / IgM、抗プロトロンビン抗体、ネオセルフ抗体(抗β2GPI/HLA-DR抗体)検査
(https://neoself.revorf.jp/clinic-list/#kanto)
山口ARTクリニックでは、ネオセルフ抗体検査の実施施設となっております。
- 夫婦染色体検査
※ご夫婦の同意が得られた場合に、ご夫婦一緒に実施します。
- 糖尿病検査
空腹時血糖、インスリン、HbA1c
- 流産絨毛染色体検査(G分染法、SNPアレイ法)
流産となった場合、染色体異常による流産かどうか判断するために行います。
男性不妊症
不妊症の原因の一つである男性不妊は徐々に認知されてきております。不妊症の原因の約半数は男性因子が関係しております。
最近では、精液検査を市販の検査キットとスマートフォンを使用して検査が可能です。わざわざ病院への受診をしなくても良いように思われがちですが、精液検査は体調や禁欲期間などにより結果が大きく変わることがあります。検査結果をどのように解釈するか、子どもを作るためには他にどのような検査があり、どのように治療したら近道になるのかを一度ご相談ください。
男性不妊手術などの専門的な治療を要する状況である場合は、男性不妊専門クリニックへご紹介をさせて頂きます。